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104 四国八十八か所遍路道
『結願の道・大窪寺道』
四国八十八か所遍路道の結願寺88番大窪寺古道は、香川県の東部にある87番長尾寺から始まり、15.6kmのうち5kmは平地道で、残りの10kmは山間部の山道となります。
前半5㎞の前山ダム沿いにあるさぬき市の「へんろ資料館」(おへんろサロン)の「道の駅ながお」を拠点として、4本のコース(第①へんろ道、第②バス通り、第③多和神社、第④四国のみち)があります。1400㎞の歩き遍路旅をしてきたお遍路さんたちは第①のコースを、バス・マイカー・自転車組は第②のコースを、登山経験者や体力のある者は第③、第④のコースを選択しています。四国遍路旅は、通し歩きで40日~50日要する長い長い遍路旅であり、大窪寺道は、結願寺に向かう歴史・文化的価値を体感できる古道です。ここでは、①へんろ道について紹介します。
第①へんろ道コース
おへんろ交流サロン(標高144m)から西方向にスタート、約50mで道案内板「旧へんろ道大窪寺道入口」を左折します。
民家を過ぎると左へ、急登のまま右に曲がり、約500mで武田徳右衛門の道標があります。
小さな谷沿いと尾根沿いを繰り返しながら延々と上って行くと、約50分で最初の休憩所があります。
歩行距離が11.0kmです。
県道3号線、国道377号線で車に気を付けて歩く必要があります。
香川県さぬき市前山にある「前山ダム」は多目的ダムで、型式は重力式コンクリート、提高は38.8m、堤長は181.5m、総貯水量は213万㎥、満水位137㎥、さぬき市へ日糧4500㎥供給、昭和43年度から昭和46年度の4年間で総工費198億円をかけ昭和50年3月31日完成したものである。
香川県は年間降水量が少なく、県面積は1877㎢で全国で最小、また標高1000mを超す山が一座しかなく、讃岐山脈に降った雨は1日で海に流れ出してしまうことから、河川上流に20ダムと2湖を設置して水資源の確保に力を入れており、前山ダムも鴨部川の上流前山地区に設置されているものである。ダム設置に伴い県道整備も行われ、大窪寺道のバス通りも大きく改修され、道の駅ながお、物産館、その後「おへんろ交流サロン」もダムの側に開設され、四季を通じて賑わっている。
丁石は、宝暦12年(1762年)5月に高知県室戸市佐喜浜の廻船問屋井筒屋利○○が1丁石を造立したのを始め、年別では12年に12基、13年に16基、14年に16基、明和元年(1784年)以降4年まで13基不明の他8基の58基が現存している。大窪寺門前から7.5kmの間に109m毎に花折峠まで70丁石が造立されている。
施主は、地元の者が32基、個人は18基、講中が5基をはじめ、全国的な遍路信仰の興隆の中で進められた。丁石は花崗岩の自然石に地蔵菩薩立像を彫り込み丁数、造立年、施主、道の分岐点や地区境の峠の要所、大窪寺までの丁数など参拝の大切な道案内の役割を果たしている。現在残されている丁石には、赤い前掛と左右の花立に〝しきび〟が地域の住民に入れられ、丁石信仰が現在も里山で守られていることを伺える。
おへんろ交流サロンから林道花折線を少し行くと武田徳右衛門の道標があります。
重要文化財に指定されている細川家住宅は、徳島県に接する県境地帯の山間部にあります。細川家は代々この地に住む農家で、主屋、納屋、木納屋が並びます。構造から18世紀後半頃に建築されたと考えられています。
槙川庚申塔は砂岩製で、丈夫は笠状を呈し、邪鬼を踏みつけ、足元に「見ざる、言わざる、聞かざる」の三猿像、側面に二鶏像、中央に青面金剛像が刻まれています。六臂で右に剣、三叉戟、矢を左にショケラ、輪宝、弓を持つ像で、文化9年(1812年)に槙川講中によって造立されました。
縁起によると養老元年(717年)に行基によって開基とされています。本尊は薬師如来です。開基の後、弘法大師が弘仁六年(815年)にこの地を訪れ、寺の背後にある女体山(774m)中腹にある岩窟で虚空蔵求聞寺法を修法したとされます。「窪地」にちなんで「大窪寺」と名付けられ、結願の寺とされたといいます。
■お接待と納札
四国では四国霊場を巡礼するお遍路さんを敬い、助けることで自身がお遍路をしていなくても、そのお遍路さんと同じ功徳がいただけると言い伝えられてきました。お遍路さんはそういった接待をいただくことに感謝を感じ「お接待をうける」という様に「御」をつけることで敬意を表すようになったとされます。
また、お接待を受けたお遍路さんは御礼として自身の納札を手渡す古来よりの風習もあります。
おへんろ交流サロン
10分 ↓ 0.5km ↑10分
武田徳右衛門道標
40分 ↓ 2.5km ↑ 35分
休憩所(70丁石)
10分 ↓ 0.6km ↑ 15分
額峠
15分 ↓ 1.2km ↑ 15分
細川家住宅
15分 ↓ 1.2km ↑ 20分
天体望遠鏡博物館(休憩所)
20分 ↓ 1.3km ↑ 20分
休憩所(30丁石)
15分 ↓ 1.2km ↑ 15分
槙川庚申塔
40分 ↓ 2.2km ↑ 35分
一丁石
5分 ↓ 0.1km ↑ 5分
88番大窪寺
○公共交通機関
徒歩の場合は、高松琴平電鉄(コトデン)長尾線の終着駅「長尾駅」から87番札所長尾寺経由で5.8km約85分で到着することができます。また、さぬき市コミュニティバスを利用して、大窪寺前のバス停始発の復路で4便(10:00、12:00、14:00、16:00発)を利用すると、おへんろ交流サロンに約25分で帰ることができます。
○自家用車の場合
四国へのアクセスは、マイカー利用の場合、3本の連絡橋(明石-鳴門、児島-坂出、尾道-今治)と4つの高速道(徳島、高知、松山、高松自動車道)があります。
大窪寺古道の起点となる「おへんろ交流サロン」へは、高松自動車道「志度IC」を降りて、県道3号線を南進し12.4km約20分で到着できます。
●「大窪寺道」を書くのにあたって参考にした本とマップ
さぬき市 「MAP おへんろ交流センター~大窪寺間のコース」
前山地区いきいき事業協議会 「さぬき市前山地区 散策マップ」
伊予史談会編『四国遍路記集 伊予史談会双書 第3週』 伊予史談会、1981.8
村上譲訳『教育社新書<原本現代訳>106 四国徧礼霊場記』 教育者、1987.3
《担当》
日本山岳会四国支部
藤井博
森山宏昭