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山岳古道とは

日光修験三峰五禅頂の道(薬師岳付近)
日光修験三峯五禅頂の道(薬師岳付近)

山岳古道とは、山の中を通るむかしの道のことです。
古代や中世の道の多くは、山の尾根など高いところを通っていました。
大雨などで崩れやすい川沿いの道や沼地、あるいは干潟が広がる平地の道ではなく、壊れにくく、日照時間が長くて見通しがきき、弓を持った敵や獣に対して有利な道が尾根沿いの道でした。
やがて、橋や道やトンネルを作る技術の向上とともに、運搬に牛馬や車が利用されるようになり、人が住む山麓へ、平地へと道は移っていきました。
木材として、あるいは燃料や肥料、食料などとして利用されていた森に人の手が入らなくなると、山にあった道は利用者がいなくなって草木に埋もれていきました。
宅地化が進んで新しい道が作られ、採石やダムやゴルフ場によって古い道は切断されました。
道は舗装され、幹線道路として整備され、やがて古い道は人々の記憶からも消えていきました。
九州防衛のために東国から防人が歩いてきた道。
修験者が悟りを得るために歩んだ山中の道。
塩や魚を牛馬に載せて運んだ道。
城を攻め落とすために作られた道。
掘り出した金銀を運ぶための道。
江戸庶民が寺社参詣のために登った道。
——さまざまな道がいまも山中に眠っています。
わたしたちは、山岳古道を歩くことを山登りの新しい楽しみ方のひとつとして提案します。
山頂をめざす山登りではなく、歴史や文化に思いを馳せながら山道を辿る楽しさを、山を愛する人々に広げたいと考えています。


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山岳古道調査について

120周年記念事業としての山岳古道調査

日本山岳会は創立120周年記念事業として、全国の山岳古道を調査し、公開する事業を行います。
当会の33の支部を中心に全国の会員が参加し、地域の方々、古道研究者の方々、自治体などの協力を仰ぎながら、
およそ4年にわたり調査を実施します。

山岳古道120選について

[対象とする古道]

(1)全国の山岳古道(旧道・廃道)、もしくは山にかかわる道
対象とする古道は近世以前に利用され、登山道や参詣道、生活の道、観光の道などとして、いまも利用されている道です。
また、明治期に拓かれた道を含んでいる場合もあります。
(2)次のうちのひとつ以上がある古道
 ①食糧、肥料、木材、金銀などの運搬、信仰、軍事などで利用されていた古道
 ②ストーリー性(文学、伝説、史実、詩歌など)がある古道
 ③遺跡や石碑などが残る古道
 ④いま脚光を浴びることなく、整備されておらず、忘れ去られようとしている古道
(3)ハイキングあるいは登山として歩ける古道
古来、わが国では人や物を運ぶ川や海も「道」であり、水運は重要な手段でした。
わが国の歴史や文化を語る上で欠かすことができないものですが、古道を歩いていただきたいという大きな目的からはずれてしまうことから、120選では、あえて地面の道のみを対象としました。

[古道120の選び方]

2020年10月から翌年3月にかけて、無数の古道の中から、全国33支部を中心とする当会会員によって地元の古道や好きな古道を推薦してもらいました。
また、監修者にも古道を推薦していただき、その中から山岳古道調査プロジェクトメンバーと監修者によって、1年以上の時間をかけて120の古道を選択しました。
しかし2つの理由から、この120選を最終的な決定とはしません。
理由1:
推薦者も監修者もプロジェクトメンバーも知っている古道に限りがあり、山岳古道というカテゴリー自体がはじめての試みであったため、判断に違いが出ています。
「あそこの古道が選ばれたのに、同じようなこちらの古道がなぜ選ばれていない?」という疑問が浮かんでくるかもしれません。
また、120選の中には、鎖やロープを必要とする道からなかば舗装がされた道まであり、高低差や歩くのに要する時間も違います。
選んだ古道が結果的にバランスを欠いていることは否めません。
しかるべき古道があった場合は、追加も考えていく方針です。
理由2:
古道を調査するなかで、道が崩壊したり薮におおわれて歩けないと判明したことがありました。
多くの古道は、それを維持する方々に支えられています。
今後、維持ができなくなったり、災害で破壊されて復興が見通せない場合には120選からはずすことも考えられます。
また、調査段階で歩けなかった古道が復旧したり、あるいは自治体の方針如何では追加することもありえます。
120という数字にこだわることなく、安全に文化や歴史を楽しめる古道を掲載したいと考えます。

[古道120の調査と報告]

古道の調査と報告は、全国支部の古道担当者が地元の古道についてまとめています。
地元の人や教育委員会などに取材をしたり、村史や調査書などの資料を調べ、実際に道を歩いてGPSで確認し、写真を撮っています。
県をまたいでいる古道は、それぞれの地域を支部で分けて担当していることもあります。
また、なかには本部(東京)のグループなど、別の地域から調査・報告をしたところもあります。
末尾の作成者名でご確認ください。

[監修者]

節田重節/日本ロングトレイル協会会長、元「山と渓谷」編集長、
高桑信一/著述業、『古道巡礼』『森と水の恵み』ほか著書多数
鈴木正崇/慶應義塾大学名誉教授、日本山岳修験学会会長、文化人類学者、民俗学者、宗教学者。『山岳信仰』ほか著書多数
根深 誠/著述業、『遥かなるチベット』『白神山地をゆく』ほか著書多数

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