single-kodo120_detail

104 四国八十八か所遍路道

保護中: かも道 いわや道 平等寺道

「かも道」「いわや道」「平等寺道」
21番札所太龍寺は、弘法大師が若い時に修行した場として確実視されています。
その太龍寺に向かう山道、「かも道」には、四国遍路道の中で一番古い南北朝時代の丁石が並び建ち、四国最古の遍路道とされています。
太龍寺から22番札所平等寺に向かう山道は、弘法大師が竜を法力で閉じ込めたという伝説の「竜の窟(岩屋)」に至る「いわや道」と「平等寺道」から成っています。
現在、竜の窟は削られて消滅し、跡地は石灰鉱山となっており、至ることはできなくなっています。

古道を歩く

■一宿寺~弘法大師座像まで
出発点は、弘法大師、その後京都東寺の僧長範が一宿したという一宿寺になります。
境内入口から左手に「かも道」に入る道があります(図1)。
登り始めは急な坂道が続きます。「青のみち」と呼ばれる竹林の中の道を進み、歩きはじめて1.5kmほどの所に三十二丁石があり(図2)、続いて右手方向に弘法大師坐像があります。
ここから弘法大師が20番札所鶴林寺に飛び立ったという伝説があり、座像に向かって左に「これより つるへと とびなされし おあと」と記されています(図3)。


■弘法大師坐像から23番札所太龍寺まで
弘法大師坐像からは岩が所々出た急坂になります。
途中「こぶし石」、「にじり石」など伝説の残る岩があり、石灰岩が露出していることから「白のみち」と呼ばれています。「白のみち」から続く岩の道を過ぎると、木々に囲まれた尾根道になります。
約1.5km歩くと十六丁石があります。
引き続いて杉林の中の道を進み、等高線に沿った道を1.2kmほど進むと、右手からの「太龍寺道」と交差します。
ここから太龍寺の山門まで舗装された急な坂道となります。
階段を昇って山門をくぐり、納経所前を通り、右手方向の大師堂を回って、本堂の方へ進みます。

■23番札所太龍寺から太龍寺山頂
本堂からは「いわや道」となります。ロープウェイ山頂駅の方向へ下り、駅の手前を通り太龍寺山頂を目指します。
木立の中の道を500mほど進むと、弘法大師が修行をしたという舎心嶽を通ります。
さらに200mほど進むと道標があります。道標の指す左手方向を山頂目指して上って行きます。

すぐに「へんろ道」と記された道標があり、登り坂を上って行きます。この辺りから傾斜が急になります。
急坂をしばらく上って行くと石段が見え、登り切ると太龍寺山頂上に着きます。

■太龍寺山頂上から「竜の窟(岩屋)」への分岐まで
山頂からは上ってきた道を「へんろ道」と記された道標まで戻って、右手方向へ道を下って行きます。
「いわや道」では舟型に地蔵が彫られた丁石が所々に残っています。
山頂から下って右手に進んでから500mほどの所には笠付道標があります。
続いて、順に丁数が増えていく丁石(太龍寺までの丁数が記されているため)を見ながら1kmほどを徐々に下って行くと二股に道が分かれる場所に来ます。
左方向に指さされた道標が立っており、本来はここから竜の窟に向かいました。

現在は竜の窟は消滅し、周辺は石灰の鉱山と成っているため立ち入り禁止となっています。「いわや道」はここまでです。
■「竜の窟(岩屋)」への分岐から薬師庵まで
竜の窟への分岐を右方向に取り「平等寺道」に入ります。
木立の中の道を約1.8km下ります。

急な下り道、谷沿いの道を下って行くと阿瀬比の集落へ出、阿瀬比の薬師庵が終点となります。

この古道を歩くにあたって

遍路道としてよく整備されていますが、行程約12km、累積標高約900m、歩行時間5~8時間の長い道のりで体力が必要です。出発点の一宿寺までは公共交通手段がないため、自家用車およびタクシーの利用が必要です。また出発点の一宿寺と終点の阿瀬比の薬師庵の間にも公共交通手段がないため、タクシーを予約するか、自家用車1台を終点にデポしておくことをおすすめします。体力があれば終点から県道28号線を徒歩で戻ることも可能です。
加茂谷タクシー:TEL 0884-35-1211
新野タクシー:TEL 0884-36-3131
阿南タクシー:TEL 0884-22-2717
橘タクシー:TEL 0884-27-0018

古道を知る

「かも道」は「太龍寺道」との交差地点に立つ道標(図6)の刻銘などからそう呼ばれています。道中に貞治四年(1365年)の刻印が残る丁石を転用した道標が数基残っており、四国八十八か所遍路道の中で最も古い道といわれています。「いわや道」は21番札所太龍寺から「竜の窟(岩屋)」に至る道で、寂本の『』(1689年(元禄2年))には、寺から三十町ほど東南へ行ったところに岩窟があると記されています。「平等寺道」は竜の窟から22番札所平等寺へ向かう道です。1965~74年(昭和40年代)に竜の窟が消滅し、廃道化していたのを近年住民が復活させました。

深掘りスポット

■一宿寺
『加茂谷村誌』によると弘法大師が太龍寺登山の際に、ここで一宿し、1095年(嘉保2年)に京都東寺の長範僧正が太龍寺中興のために訪れた際も一宿したことから、一宿寺という寺名になったとされています。


■「かも道」の丁石
かも道には南北朝時代の丁石を転用した丁石が残ります。「四十一丁」「三十八丁」「三十五丁」「三十三丁」「三十二丁」「廾八丁」「廾六丁」「廾三丁」「二十一丁」「十六丁」「十三丁」「十丁」「七丁」「三丁」の14基が報告されています。
■21番札所太龍寺
弘法大師空海による『』(797年(延暦16年)成立)に境内から南西600mほどの所にある舎心嶽で虚空像求聞法を修行したことが記されており、実際に弘法大師が訪れた地として確認されています。山門は鎌倉時代の建立で、他の堂宇は江戸時代以降に復興したものとされています。

ミニ知識

■お接待と納札
四国では四国霊場を巡礼するお遍路さんを敬い、助けることで自身がお遍路をしていなくても、そのお遍路さんと同じ功徳がいただけると言い伝えられてきました。お遍路さんはそういった接待をいただくことに感謝を感じ「お接待をうける」という様に「御」をつけることで敬意を表すようになったとされます。
また、お接待を受けたお遍路さんは御礼として自身の納札を手渡す古来よりの風習もあります。
https://88shikokuhenro.jp/
■太龍寺の年中行事
本尊初会式 1月12日
 弘法大師正御影供 旧暦3月21日
https://88shikokuhenro.jp/21tairyuji/

まつわる話

●弘法大師坐像
 この場所より弘法大師が20番札所鶴林寺へと飛んでいった伝説が記されています。


●こぶし石
 弘法大師が転がってきた大岩を拳で受け止めたという伝説が残る岩。岩に拳の跡が残っているとされます。(加茂谷へんろ道の会 『あなん遍路史跡めぐり』)
●竜の窟(岩屋)
 弘法大師が田畑を荒らす悪龍を法力で閉じ込めたという伝説があった鍾乳洞跡、現在は消滅している。(加茂谷へんろ道の会 『あなん遍路史跡めぐり』)
●薬師庵
 竜の窟(岩屋)に安置されていた薬師如来像を移転したとされます。(加茂谷へんろ道の会 『あなん遍路史跡めぐり』)

ルート

一宿寺
↓ 60分 2km
弘法大師坐像
↓ 80分 3km
太龍寺本堂
↓ 40分 1.5km
太龍寺山頂
↓ 60分 2km
「竜の窟(岩屋)」への分岐
↓ 60分 2km
薬師庵

アクセス

■公共交通機関
〇JR阿南駅~一宿寺(阿南市加茂町宿居谷5)
タクシー(約14km、25分)
*阿南タクシー:TEL 0884-22-2717
*橘タクシー:TEL 0884-27-0018
*加茂谷タクシー:TEL 0884-35-1211
*新野タクシー:TEL 0884-36-3131
○阿瀬比~JR阿南駅
 徳島バス[88]阿南センター前行き 阿南駅下車(35分)
 タクシー(約15km、25分)
■マイカー
・徳島自動車道・徳島I.C. → 国道11号線を南に進む → 国道55号線を南に進む → 勝浦川橋南詰交差点を右折、県道16号線を進む → ローソン勝浦町沼江店手前を左折、県道28号線を進む → 阿南市加茂谷鯉祭りイベント会場に駐車(イベントが開催されていなければ無料で駐車可能)→ 徒歩にて一宿寺へ
*車2台で行き、1台を終点近くの道の駅わじき(那賀郡那賀町中山関が原35-56)の駐車場に駐車しておくことをお勧めします。

参考資料

●「かも道」「いわや道」「平等寺道」を書くのにあたって参考にした文献
〇徳島県教育委員会編『徳島県歴史の道調査報告書 第五集 遍路道』 徳島県教育委員会、2001.3
○徳島県教育委員会編『阿波遍路道 いわや道・かも道(第21番札所 太龍寺) 調査報告書』 徳島県教育委員会、2011.1
〇伊予史談会編『四国遍路記集 伊予史談会双書 第3週』 伊予史談会、1981.8
〇村上譲訳『教育社新書<原本現代訳>106 四国徧礼霊場記』 教育者、1987.3
○加茂谷へんろ道の会 『あなん遍路史跡めぐり』 
●読者が参考になる文献
〇日本遺産 ポータルサイト「四国遍路」 STORY #015
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story015/
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/stories/story015/spot/
●古文書、古地図、絵図、絵画など
○四国徧礼絵図(愛媛県歴史文化博物館 絵図・絵巻デジタルアーカイブ
https://ehime-archive.iri-project.org/detail/om-0078
○『四国徧礼道指南 増補大成』(香川県立図書館デジタルライブラリー)
https://www.library.pref.kagawa.lg.jp/digitallibrary/henro/komonjo/detail/DK01460.html
○徳島県文化の森総合公園/とくしまデジタルアーカイブ
https://adeac.jp/tokushima-bunkanomori/detailed-search?mode=catalog&word=&bl1=subject&bl1word=%E9%81%8D%E8%B7%AF&bl1op=and

協力・担当者

《担当》
日本山岳会四国支部
庄武憲子

《協力》
徳島県立博物館

Page Topへ